本日ご紹介させていただくお話は、元リッツカールトンホテル日本社長であった高野登さんからお聞きした話です。リアルタイムでもお話を聞かせて頂きました。そして「宮崎中央新聞」今は「日本公演新聞」と名前が変わっておりますが、その宮崎中央新聞の中にも掲載されていたお話です。
Voicyリスナーの皆様のお役に立てればありがたいです。
私はリアルタイムでこの話を聞かせて頂き泣けてきました。その場が鮮明に浮かんだからなんですね。そして宮崎中央新聞様で文字として拝見させて頂き、やはり2度感動させて頂けました。是非とも最後までお付き合いくださいませ。
ボーリングでストライクを取るための絶対条件がひとつだけあります。
それはセンターピンを外さないということです。
これは東北のあるホテルの実話です。
真夏のある日、喫茶店に家族連れがやってきて、娘さんご夫婦はアイスコーヒー、お孫さんはアイスクリーム、おじいちゃんは麦茶をオーダーしました。飲み物を待ってる間に、お孫さんがおじいちゃんの異変に気付きました。夏の暑さと疲れでおじいちゃんが失禁したのです。そのことに、周りのお客様はまだ誰も気づいていませんでした。
当時26歳だったウェイトレスは、そのテーブルの様子をよく観察していて、いち早く異変に気が付いたのです。
そして彼女は、麦茶をおじいちゃんの前に置く時に手を滑らせました。麦茶はおじいちゃんの股間に向かって飛び散りました。
それで周りのお客様に聞こえるような声で
「申し訳ありません。何か着替えるものがないか探しますので、一緒に来てもらえませんか」と言って、おじいちゃんとお孫さんを連れたしたのです。
その瞬間に、彼女が見抜いたセンターピンは何だったのか?
一つは「絶対にお客様に恥をかかせない」ということ。
もう一つは「その恥は自分が引き受ける」ということでした。
この二つのセンターピンが見えた瞬間、彼女の行動は決まったのだと思います。
この話を聞いた時、ここのチームには間違いなく良いリーダーがいると思いました。
普段から
自分たちの仕事とは何だろう
どういう思いで仕事をするべきなんだろう
ということを話し合ってるグループでない限り、思いつきでそういうことはできません。
この話を聞いた後「こんな時どうする?」と若手ホテルマンの5人に聞いてみました。
「麦茶をこぼします」と即答したのは2人。
後の3人は少し考えてから
「おじいちゃんが頼んだのは麦茶ですよね。それをこぼします」と答えました。
しかし、考えてる暇はありません。
即答出来るように、日頃からのトレーニングが大事なのです。
瞬発力、判断力、行動力、全て繋がって初めて本当の仕事が出来上がります。
そういう仕事が出来る仲間がたくさんいれば、職場の風が変わって行きます。
どんな風を流したいのか?
決めるのは経営陣です。
そしてそれを具体的にどういう風に落とし込むのかは、それぞれの現場のリーダーが考えてやることです。
一人ひとりがお客様のセンターピンに向き合った生き方を考えることで、その日1日の働き方が変わっていきます。
今日という1日は、皆さんにとっても、私にとっても残りの人生第1日目です。
今日もみんなと一緒に仕事が出来る!
これは当たり前のことではありません。
そういう事を日々考えながらやっているチームと、全く無頓着なチームとでは仕事への向き合い方が違ってくるでしょう。
やるかやらないかは、能力の差ではなく、意志力の差です。
ブレーキを踏む力と
アクセルを踏む力
どちらを踏むかは自分で決められます。
それによって自分が変わることも出来るのです。
こう考えながらやってきたのがリッツカールトンであり、私が出会ってきた様々な結果を出している、素晴らしい方々でした。
どういう選択をされ
どういう組織を作るか
皆さんの中にすべての答えがあります。
人とホスピタリティ研究所所長
前リッツカールトンホテル日本支社長
高野登