タイトル【縁を生かす】
人間関係がなければ、私たちの生活は成り立たないと思いますが、そのきっかけとなるのが、ちょっとした人と人との触れ合い、いわゆる「縁」であると思います。
致知12月号の巻頭記事をご紹介させていただきます。
このメッセージは話し方教室を営んでいらっしゃいました、中村豊秀先生から届いたものでした。
【縁を生かす】
その先生が5年生の担任になった時、生徒の中で一人服装が不潔でだらしなく、どうしても好きになれない少年がいた。中間記録に先生は少年の悪い所ばかりを記入するようになった。
ある時、少年の1年生からの記録が目にとまった。
朗らかで友達が好きで人にも親切、勉強もよくでき将来が楽しみとある。
「これは間違いだ、きっと他の子の記録に違いない!」先生はそう思った。
2年生になると、母親が病気で世話をしなければならず、時々遅刻すると書かれていた。
3年生では母親の病気が悪くなり、疲れていて教室で居眠りする。後半の記録には、母親が死に希望を失い悲しんでいるとありました。
4年生になると、父は生きる意欲を失い、アルコール依存症となり、子供に暴力を振るう。
先生の胸に激しい痛みが走った。
ダメと決めつけてた子が、実は深い悲しみをじっと胸に収め、必死になって生き抜いている生身の人間として、突然自分の前に立ち現れてきたのだ。
先生にとって、まさに目を開かれた瞬間であった。
放課後先生は少年に声をかけた。
「先生は夕方まで教室仕事をするから、あなたも勉強していかない。分からないところは教えてあげるから」
少年は初めて笑顔を見せた。
それから毎日、少年は教室の自分の机で予習復習を熱心に続けた。授業で少年が初めて手を上げた時、先生に大きな喜びが沸き起こった。少年は自信を持ち始めていた。
クリスマスの午後だった、少年が小さな包みを先生の胸に押し付けてきた。後で開けてみると香水の瓶だった。亡くなったお母さんが使っていたものに違いない。
先生はその一滴を付け、夕暮れに少年の家を訪ねた。雑然とした部屋で一人で本を読んでいた。
少年は気がつくと飛んで来て、先生の胸に顔を埋めて叫んだ
「ああ!お母さんの匂い!今日は素敵なクリスマスだ」
6年生では、先生は少年の担任ではなくなった。卒業の時に少年から1枚のカードが届いた。
「先生は僕のお母さんのようです。そして今まで出会った中で一番素晴らしい先生でした。」
そして卒業後6年経って、またカードが届いた。
「明日は高校の卒業式です。僕は5年生で先生に担当してもらってとても幸せでした。おかげで奨学金をもらって、医学部に進学できます。」
10年を経て、またカードが来た。
そこには、先生と出会えたことへの感謝と、父親に叩かれた体験があるから、患者の痛みがわかる医者になれると記され、こう締めくくられていた。
「僕はよく5年生の時の先生を思い出します。あのまま駄目になってしまう僕を救ってくださった先生を、神様のように感じます。大人になり医者になった僕にとって、最高の先生は5年生の時に担任してくださった先生です。」
そして1年経って届いたカードは、結婚式の招待状だった。
「どうぞ母の席に座ってください」と1行書添えられていた。
たった1年間の担任の先生との縁。
その縁に少年は無限の光を見出し、それを拠り所として、それからの人生を生きた。ここにこの少年の素晴らしさがある。
人は誰でも無数の縁の中に生きている。
無数の縁に育まれ、人はその人生を開花させていく。
大事なのは与えられた縁をどう活かすかである。
この【縁を生かす】 っていうお話は実話です。
私は講演会の最後に【縁を生かす】 よく読ませて頂きました。
私がこの【縁を生かす】 を読みながら感じていた事は、正直自分の子供たちのことも考えました。
娘も息子も結婚しましたが、私は子供たちの結婚式に出ることもできない、そんな親です。
毎回この【縁を生かす】を読みながら、「本当に人とのご縁によって人生が変わるなー!」っていうことを感じておりました。
いつか子供達と会った時に「母は一生懸命生きてきた」そんな自分でいたい。
これだけでしたね、自分自身のモチベーションは。
そして過去を悔いたところで、もう過去は戻らない。
そんな中、人との出会いによって人生が大きく好転したり、出会いの質が人生の質を決めたり、本当に生まれてきた以上は「誰とどのようなご縁を作って行けるかな?」っていうことも大事だなぁということを思っております。
このお話がVoicyリスナーの皆様にとって、本当に心に深く残るメッセージであれば嬉しいです。